認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議

昨年末、12月13日(火)に開かれた「第5回 認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議」の資料が厚生労働省のホームページに載りました。

 

列車との衝突により、認知症高齢者が死亡する事故が発生し、その後、原告(JR東海)から被告(遺族)宛に、損害賠償請求がなされたことを受けての会議。

 

資料1として「認知症高齢者等による事故等の実態把握等に関する検討等について(概要)」、資料2として「認知症高齢者等による事故等の実態把握等に関するワーキンググループにおける検討について(まとめ)」が公開されています。

 

「概要」には、以下のようなことが記されています。

 

1.各省庁における実態把握

○厚生労働省 :認知症の人の日常生活におけるトラブル等

・家族アンケート調査によると、生活障害、金銭、行動・心理症状など、トラブル内容は様々のものがある。

○法務省 :法定監督義務者又は準監督義務者の損害賠償責任について判示した裁判例

・認知症の患者が加害者となったケースは不見当(知的・精神障害者に関する裁判例:10件)。

○金融庁 :民間保険の保険金支払い対象となった認知症患者による事故等の事例

・認知症患者の加害行為を監督義務者が個人賠償したケースは非常に少ない。(年間数件程度/社)

○国土交通省:認知症の人が関係する鉄道事故等

・平成26年度中の事故:全29件(損害額は最大約120万円。損害内容としては「人件費」が一番多い。)

○警察庁 :認知症の人が交通事故を端緒として自動車運転免許取消し等に至った事案(※)

・平成27年の交通事故(78件)のうち人身事故:27件、物損事故:51件。

※事故後の臨時適性検査(医師の診断)等により運転者が認知症であることが判明した事案のみ。

 

2 課題

(1)事故等の未然防止・早期対応の必要性

・認知症の方が重大な事故を発生させないようにするための地域の見守り体制づくりが必要。

・地域で認知症の方と関わることが多いことが想定される事業者(小売業、金融機関、公共交通機関等)が気づき、早期に必要な対応ができるよう、認知症に関する理解を深める取組が必要。

・また、鉄道事故等の未然防止に向けて設備・ハード面での対応が必要。

(2)起こりうる損害への備え・事故等が起こった場合の損害への対応

・新たな制度的対応に係る検討や民間保険の活用。

 

3 今後の施策等

(1) 事故等の未然防止・早期対応

①地域における見守りの体制整備の推進

○徘徊・見守りの体制整備について、都道府県が未実施市町村の支援や広域での体制整備を推進する事業を新たに開始。

○認知症サポーターが地域の見守り体制で活躍している事例などを広め、より効果的に活動できる仕組み作りを進める。

②認知症に地域で関わることが想定される職域における取組

○地域と関わりの強い小売業・金融機関・公共交通機関等の職員に対して、認知症サポーター講座の受講を周知する。

○運転免許センター内に医療系専門職員を配置して運転適性相談に当たらせることにより、専門的な見地から病状を早期に発見し、認知症の方による交通事故の未然防止を図る取組を推進する。

③鉄道事故等の未然防止に向けた設備・ハード面への対応

○踏切道に取り残された認知症高齢者等の歩行者を救済するため、検知能力の高い障害物検知装置や非常押しボタンの設置を推進する。

(2)起こりうる損害への備え・事故等が起こった場合の損害への対応

①新たな制度的な対応について

○責任能力がなく、また監督責任者がない場合の被害者救済のあり方については、認知症の方に限らず、責任能力と賠償責任に関する法制上の課題等も含めた議論が必要である。また、責任能力に関わりなく幅広く損害をカバーする仕組みについては生活のあらゆる場面が想定される中で、その範囲、財源、モラルハザードへの対応も含め幅広い議論が必要であり、直ちに新たな制度的な対応を行うことは難しいと考えられる。

○加えて、各省庁における実態把握の取組の結果において、認知症に起因する事故・トラブル等は、一定件数発生しているが、その内容や損害などは多様であるとともに、今回の最高裁判決の事案のように損害額が高額となる事案が、頻繁かつ多発しているという事は確認されなかった。また、②にあるように民間保険も開発が進められている。

○このため、まずは、上記(1)、(2)②の施策等を進め、今後の実態を注視しながら必要に応じ、関係省庁連絡会議において検討する。

②民間保険について

○鉄道事故に関し、特定の鉄道会社などを対象に、人身事故による電車の運休や遅延に伴う費用や、復旧のための人件費などをカバーするオーダーメイド的な保険も検討されている。

○また、個人として法的な賠償責任を補償するための保険も様々な商品が開発されている。

○このため、まずはこうした民間保険について、今後の実態を注視するとともに、特に個人の賠償責任を補償する保険について、市町村や「認知症の人と家族の会」等の関係団体と連携しつつ、必要に応じて紹介・普及等を行う。