要望書に対する県の回答

 昨年度末、平成29年3月30日に、埼玉高次脳機能障害連合会が出した「高次脳機能障害支援に関する要望書」に対して、7月3日付で以下の回答が埼玉県から示されました。

 

◆要望事項(項目 警察等関連)

 犯罪被害者等基本計画に「高次脳機能障害者への支援の充実という施策が位置づいていることを踏まえ、警察官の方を対象に、高次脳機能障害についての研修を実施してください。

 

◆回答

 県警察においては、警察学校で行う初任科課程等で、障害者に対する理解を深める教養を取り入れ、部外講師による講義を行うとともに、幹部任用科課程等においては、高次脳機能障害についての教養を行っているほか、警察官に対する犯罪被害者支援教養等の機会において、臨床心理士による犯罪等被害者への接し方等に関する教養を取り入れ、その中で被害後に残存する可能性のある精神的な障害についての理解の深化に努めています。

 今後、同教養において、犯罪被害による後遺障害の一つとして高次脳機能障害の特徴等や具体的配慮について記載した資料を作成し、高次脳機能障害の理解を深める教養を推進していきます。

 また、職員が各種業務を行う中で、障害のある方に不要な負担をかけたり、必要な支援を怠ったりすることのないよう、「障害のある方への対応ハンドブック」を作成し、同資料中に高次脳機能障害の特性等についても盛り込んでいるほか、警察部内の機関誌に「警察官として知っておくべき障害のある方への適切な対応」を連載し、その中で高次脳機能障害のある方への具体的配慮についても記載して、各職員の障害のある方への理解の深化に努めております。

 そのほか、障害を理由とする差別の解消に関する法律(平成25年法律第65号)の施行に伴い、県警察において障害のある方への基本的な対応要領を定めたほか、内閣府作成の「障害者差別解消法リーフレット」及び県障害者福祉推進課か作成の「障害のある方への配慮マニュアル」等を各所属に配布し、職員の理解を深める教養を行っています。

 

 

◆要望事項(項目 保健所関連)

 平成29年3月8日(水)に開催された障害保健福祉関係主幹課長会議心の健康支援室の資料「てんかん対策等について」のところに「(3)告示脳い脳障害対策について」として「より一層の高次脳機能障害に対する理解の促進に努めていただくよう、お願いしたい」と記されています。地域保健福祉法第49条第3項、母子保健法第8条など、各種法律で保健所による市町村支援が規定され、市町村の各種会議に職員を派遣されている業務に、高次脳機能障害についての正しい知識の普及を位置づけてください。

 

◆回答

 保健所においては、市町村等との精神保健連携会議に、埼玉県高次脳機能障害支援センターの職員を招き、高次脳機能障害についての普及啓発を行っております。

 また、支援センター主催の研修等に職員が参加し、正しい知識の取得に努めております。

 今後も引き続き、支援センターを中心として、関係機関と連携を図りながら、対応してまいります。

 

 

◆要望事項(項目 保健所関連)

 地域保健法および「地域保健法第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針(最終改正:平成27年3月27日)の枠組みで、高次脳機能障害関係の家族会などをソーシャルキャピタルと位置づけ、保健所が高次脳機能障害関係の家族会などのソーシャルキャピタルを育成・活用することで、埼玉県内の高次脳機能障害に係る地域の健康課題の解決に向き合ってください。

 

◆回答

 「地域保健法第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針」においては、保健所の機能として、ソーシャルキャピタルの情勢と活用が示されています。

 現在、埼玉県では、高次脳機能障害に係るソーシャルキャピタルの育成及び活用につきましては、高次脳機能障害支援センターを中心として取り組んでいるところです。

 保健所としましても、医療、福祉等の関係機関と連携を図り、地域の健康課題の解決に向け取り組んでまいります。

 

 

◆要望事項(項目 診断体制関連)

 埼玉県内で高次脳機能障害について診断や治療ができる医療機関がごく限られている現状がございますが、認知症と同様、身近な地域で高次脳機能障害についても診断していただける体制を整備してください。

 

◆回答

 埼玉県では、高次脳機能障害に対する医療関係者の専門性を高めるため、高次脳機能障害の診断・評価に係る医師や相談・指導などに係る専門職員向けの研修会を毎年開催しています。

 平成28年度は、熊谷、川越、春日部、越谷など県内各地で、合計6回開催し、延べ387人に受講していただきました。

 引き続き県内各地で医療機関向けの研修会を実施し、身近な地域で高次脳機能障害を診断できる体制が整備できるよう努めてまいります。

 

 

◆要望事項(項目 リハビリテーション関連)

 障害者福祉推進課の事業予算、地域リハビリテーション推進費を活用して、高次脳機能障害者へのリハビリテーションサービスについても、埼玉県内のより身近な地域で適切に提供されるようにしてください。

 

◆回答

 埼玉県における地域リハビリテーション支援体制は、平成26年4月にスタートして本年度で4年目の活動に入りました。

 県ではこれまでの3年間は、県全域での支援体制の市営に取り組み、相談窓口(地域リハビリテーションケアサポートセンター)の設置と協力医療機関の確保を行ってまいりました。

 平成29年3月末現在、地域リハビリテーションケアサポートセンターは二次医療圏域ごとに設置(10か所)し、協力医療機関は196か所認定することができました。

 現在は、介護分野を中心に市町村へリハビリ専門職を派遣し、件数も年々増加してきたところです。

 今後は、介護分野以外の支援に対してどのように展開していくかが、課題の一つとして認識しています。

 今年度は、県総合リハビリテーションセンターとも連携しながら障害分野でどのように展開できるか研究してまいります。

 

 

◆要望事項(項目 介護保険関連)

1.原行の埼玉県高齢者支援計画では「若年性認知症等への支援」のところで脳血管疾患に伴う高次脳機能障害のことも記されています。若年性認知症施策推進事業に、脳血管疾患に伴って高次脳機能障害となった第2号被保険者への支援のことも位置づけてください。

2.高齢の障害者への支援の流れで、高齢の高次脳機能障害者への支援が検討されていくと思われますが、高齢の高次脳機能障害者への支援について、認知症施策でどのよう対応されていくのか、明確にしてください。

3.「埼玉県認知症高齢者等徘徊SOSネットワーク」の対象に、高次脳機能障害者も加え、市町村の障害福祉担当課とも連携する仕組みにしてください。

 

◆回答

1.県の「若年性認知症施策推進事業」は、新オレンジプランや厚生労働省の若年性認知症施策推進事業実施要綱に基づき実施しています。若年性認知症の方には「若年性認知症施策推進事業」、高次脳機能障害の方には「高次脳機能障害者支援事業」や介護保険サービスにより支援してまいります。

2.高齢の高次脳機能障害者への支援については、保険者である市町村と連携し、適切な介護保険サービスが提供できるよう努めてまいります。

3.「埼玉県認知症高齢者等徘徊SOSネットワーク」は、徘徊により行方不明となった方の早期発見・保護等を行う仕組みとして運用しているところです。

 

 

◆要望事項(項目 障害者支援計画関連)

 第5期埼玉県障害者支援計画策定の際、障害者団体にヒアリングなどで、高次脳機能障害のある当事者・家族の意見を計画に反映させてください。

 

◆回答

 埼玉県障害者支援計画の策定にあたっては、当事者やその家族、そして一般の県民などから広く意見を伺うことは重要であると考えています。

 そこで、学識経験者、事業者、関係行政機関や一般公募委員のほか11の障害者団体から推進をいただいた当事者や家族が委員となっている埼玉県障害者施策推進協議会において御意見を伺い、障害者支援計画策定の参考としております。

 第5期埼玉県障害者支援計画の策定にあたっては、貴団体を含む19の障害者団体からヒアリングを行い、施策の参考とさせていただく予定です。

 

 

◆要望事項(項目 小児の高次脳機能障害関連)

 小児の高次脳機能障害について、埼玉県としてどのような体制で、どのように支援していくのか、方針を示してください。

 

◆回答

 埼玉県では、高次脳機能障害に対応できる医療機関を公表していますが、この中で、18歳未満の高次脳機能障害への対応できるとして公表いただいている医療機関は、現在25の医療機関となっています。

 脳に損傷を負った時や回復期など医療機関を受診した時に、高次脳機能障害の診断を適切に受けることが重要です。

 このため、昨年度、小児医療の関係者や特別支援学校で療育に携わる方にも参加を募り、「小児の高次脳機能障害への理解と対応」をテーマに、高次脳機能障害に関する専門研修会を開催し80人に受講いただきましたが、平成29年度も、小児の高次脳をテーマとした研修会を開催することといたしております。

 引き続き、小児の高次脳機能障害に対する医療関係者や療育に携わる方の理解を深めるととおに、対応できる医療機関を増やす取組を推進し、身近な地域で支援をできる体制の整備に努めてまいります。

 

 

◆要望事項(項目 意思疎通支援事業関連)

 埼玉県が実施する「専門線の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業」及び「専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業」の対象障害に高次脳機能障害も含めてください。

 

◆回答

 意思疎通支援事業とは、障害者等とその他の者の意思疎通を支援する手話通訳者、要約筆記者等の派遣等を行い、意思疎通の円滑化を図ることを目的とした事業です。

 県では、市町村が実施する手話通訳者等の育成や派遣など市町村への後方支援と、県の登録手話通訳者等の養成と派遣等を実施しています。

 今後も、社会生活におけるコミュニケーションを保障し、円滑な社会生活を営めるように手話通訳者等の養成・派遣等を総合的に実施してまいります。

 

 

◆要望事項(項目 障害者就労支援関連)

 高次脳機能障害の方への就労支援の体制を埼玉県内でどのように整備していうのか、方針をお示しください。

 

◆回答

 高次脳機能障害者の就労についても他の障害者の就労と同様、各市町村の障害者就労支援センターや県内10か所にある障害者就業・生活支援センターが本人からの相談に応じ、本人の希望や適性に配慮しながら対応しています。

 就職先については、障害者の希望勤務地を管轄するハローワークの求人情報により紹介しています。市町村の小ギア者就労支援センターや障害者就業・生活支援センターでは求人情報の中からできる限り本人の希望に合う就職先を紹介しています。

 なお、一般企業等での就労が困難な方については、地域で経済的に自立した生活を送るため、障害者就労施設等の就労機会の提供に努めてまいります。

 障害者就労施設で働く方の収入を少しでも増やしていくため、技術指導員確保への補助や製品のPRを通じて、魅力ある製品の開発や販路拡大を図ります。

 また、障害者就労施設などからの調達の更なる推進など、施設で働く方の工賃の向上に努めます。

 

 

◆要望事項(項目 精神保健福祉審議会関連)

 埼玉県精神保健福祉審議会において、高次脳機能障害児・者への支援を議題として取り上げてください。

 

◆回答

 埼玉県精神保健福祉審議会では、精神保健及び精神障害者の福祉に関する事項の中から、依存症対策、措置入院などその時々に応じたテーマを取り上げて協議しています。

 高次脳機能障害児・者への支援についても、テーマ候補のひとつとして検討してまいります。

 

 

◆要望事項(項目 精神障害にも対応した地域包括ケアシステム関連)

 来年度から始まる「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」のモデル事業において、高次脳機能障害も対象に含めてください。

 

◆回答

 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」のモデル事業は、国の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業実施要綱」に基づき実施するものです。

 この事業は、精神疾患はすべての人にとって身近な病気であり、精神障害の有無や程度にかかわらず、だれもが安心して自分らしく暮らすことができるような地域づくりを進める必要があること、また、精神科病院における長期入院精神障害者の地域移行を進めるためには、これまでの精神科病院や地域援助事業者による努力だけでは限界があるということを基本認識として、自治体を中心とした地域精神保健医療福祉の一体的な取組の推進に加えて、地域住民の協力を得ながら、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるようにすることを目指すものであります。

 平成29年度についてはモデル事業の実施予定はありませんが、モデル事業を実施する場合、高次脳機能障害も含めて精神障害の程度によらず地域で安心して暮らしていけるための支援体制づくりに取り組んでまいります。

 

 

◆要望事項(項目 地域保健医療計画関連)

 次期地域保健医療計画。現在、高次脳機能障害について診断や治療ができる医療機能がごく限られていることを踏まえ、「脳卒中医療」、「精神疾患医療」、「リハビリテーション医療」において、埼玉県全体、そして二次医療圏毎で、高次脳機能障害にどのような医療体制を整備していくのか、明確に示してください。

 

◆回答

 高次脳機能障害の医療体制については、県総合リハビリテーションセンター内に高次脳機能障害者支援センターを設置し、相談・診断・治療・訓練など社会復帰までの一貫した支援を行っています。また、脳卒中などの病気による後遺症で高次脳機能障害になった人が適切な診断を受けられるよう、地域の医療機関や市町村、保健所などによる連携体制の充実を図っています。

 なお、高次脳機能障害者の精神症状への対応につきましては、かかりつけ医師や地域の精神科医療機関、地域包括支援センターなどが相互に連携し支援体制の充実を図っています。

 今後も引き続き、障害のある方々が住み慣れた地域で適切なサービスを受けながら暮らしていけるよう、支援を続けてまいります。

 

 

◆要望事項(項目 全体)

 京都府高次脳機能障害者支援プランのように、埼玉県における高次脳機能障害支援の「施策(制度)のスキーム」と「工程表(ロードマップ)」を示してください。

 

◆回答

 高次脳機能障害については、脳に損傷を負った時や回復期など医療機関を受診した時に、高次脳機能障害の診断を適切に受けることが重要です。そして、障害特性に応じた認知リハビリテーションが行われ、その人に応じた社会復帰に向けた生活訓練、就労訓練等の支援サービスが連続して提供されていくことが必要です。

 このため、県では、総合リハビリテーションセンターに設置した高次脳機能障害者支援センターを核として、市町村や医療機関などと連携を密にし、支援のネットワークの構築を進めていくことにより、専門的相談、助言指導、情報提供およびリハビリテーションなど地域生活支援の充実を図ることとしております。

 具体的には、高次脳機能障害者支援センターにおいて、総合的な相談を行うとともに、通所が可能な方に対しては、リハビリテーションセンターの各部門が連携して総合的な支援を実施してまいります。また、センターに通所できない方に対しては、地域の支援機関での支援機能の充実を図るため、市町村の協議を進めながら、医療機関、保健所、相談支援事業所などへのサポートを強化してまいります。

 高次脳機能障害支援センターにおける直接の支援及び地域ごとの支援それぞれの充実を図るとともにその連携を図ることで、高次脳機能障害者一人ひとりに対するきめ細やかな専門的相談、社会復帰までの連続した支援を行い、高次脳機能障害者への全県的な支援体制の整備を図ってまいります。